街中を歩いていると、行列ができているお店を見かけることがあります。特に話題のスイーツ店やラーメン店、新商品が発売されたばかりのショップの前には長蛇の列ができることも珍しくありません。「行列がある=人気がある」と考え、つい自分も並びたくなることはないでしょうか?
実は、行列に並びたくなるのは単なる偶然ではなく、人間の心理が深く関係しています。本記事では、行列に並びたくなる心理学的な理由と、それを活用するマーケティング戦略について解説します。
1. 社会的証明の原理(Social Proof)
人間は「他人がしていることは正しい」と無意識に判断する傾向があります。これは心理学者ロバート・チャルディーニが提唱した「社会的証明の原理(Social Proof)」によるものです。
例えば、
- レストランの前に行列ができていると、「ここは美味しいに違いない」と思う
- 口コミサイトで高評価の店を選んでしまう
- SNSで話題になっている商品を買いたくなる
このように、多くの人が支持しているものに対して、私たちは無意識に「これは価値があるものだ」と判断しやすくなります。その結果、行列を見ると「自分も体験しなければならない」と考え、並びたくなるのです。
2. 希少性の原理(Scarcity Principle)
「限定」「数量限定」「期間限定」などの言葉を聞くと、つい欲しくなってしまうことはありませんか?
これは「希少性の原理(Scarcity Principle)」によるものです。人は手に入りにくいものほど価値があると感じる心理的特性を持っています。
行列ができていると、「この商品や体験は特別なものであり、手に入れる価値がある」と思い込んでしまうのです。そのため、「今買わなければ後悔するかも」と考え、並びたくなります。
3. FOMO(Fear of Missing Out:取り残される不安)
現代ではSNSの発展により、「話題に乗り遅れたくない」「流行についていきたい」という心理がより強くなっています。この心理現象は「FOMO(Fear of Missing Out)」と呼ばれます。
行列に並ぶことで、
- 「自分も流行に乗っている」という安心感を得られる
- SNSで写真を投稿し、話題に参加できる
- 他人と同じ体験を共有し、共感を得られる
といったメリットを感じるため、結果的に行列に並ぶことを選択するのです。
4. 行動経済学から見る「サンクコスト効果」
行列に並ぶこと自体が面倒だと感じる人も多いはずです。しかし、一度並び始めると「ここまで待ったのだから、最後まで待とう」と考えてしまいませんか?
これは「サンクコスト効果(Sunk Cost Effect)」と呼ばれる心理現象です。
例えば、
- すでに30分並んだので、あと10分なら待とうと思う
- 並んだこと自体に価値を感じ、満足度が高まる
この心理が働くことで、結果的に「並んでよかった」と感じるのです。
5. 企業が行列をマーケティングに活用する方法
企業は行列が生まれる心理を理解し、マーケティング戦略として活用しています。
1. 限定販売・数量限定戦略
- 「1日100個限定のスイーツ」
- 「数量限定!なくなり次第終了」
- 「今だけの特別メニュー」
このような言葉を使うことで、消費者の希少性心理を刺激し、行列を作りやすくします。
2. 行列を「見せる」工夫
- 店の前に意図的に行列を作る
- 予約制にして待機時間を発生させる
- 店内の席数を減らして混雑感を演出する
行列があることで「この店は人気がある」という印象を作り、さらに人を集める効果が生まれます。
3. SNSとの連動
- 「行列に並ぶ価値がある」とインフルエンサーに発信させる
- ハッシュタグキャンペーンで話題を拡散
- 行列を体験した人に特典を用意
これらの施策により、行列の価値を高め、より多くの人が並ぶ仕組みを作ることができます。
まとめ:行列は心理学とマーケティングの融合
行列に並びたくなるのは、単なる偶然ではなく、
- 社会的証明の原理(他人の行動を参考にする)
- 希少性の原理(手に入りにくいものを求める)
- FOMO(取り残される不安)(流行に乗りたい心理)
- サンクコスト効果(時間を無駄にしたくない)
といった心理的要因が関係しています。
さらに、企業はこの心理を利用して「意図的に行列を作る」ことで、ブランド価値を高め、売上を向上させています。
次回、行列に出くわしたときは「なぜ自分は並びたくなっているのか?」と一歩引いて考えてみるのも面白いかもしれませんね。
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